Classici giapponesi con furigana
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さけさかずきとっくり
酒・杯・徳利
山本 周五郎
Leggi 酒・杯・徳利 (さけさかずきとっくり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4047 caratteri · 9 schermate
そして紙の余白へ、ペンを執ってしっかりと第三幕と書き入れた。
「例えこのままこれが世に出る機会を得ないとしても、とにかくこの画師弘高は傑作だ。ここには文章の扮飾もなく、色模様もなく、めりはりもなく、約束もなく愁嘆もない、が――凡てがある!」
青年は盃を呷った。
外では氷の凍み割れる音がしている、風は少しずつ衰えてさし込む月明りもようやく崩れかかった壁まで廻った。
「われ眠らんと欲す、君しばらく去れ」
青年は昂然と吟じ始めた。
「明朝、志あらば琴を抱いて来れ」
一瓶の酒が終わると、青年はどてらの上から古いマントを引っ掛け、帽子を手に持って土間へ下りた。雨戸を明けると凄じく冴えた月夜だ、青年は帽子を冠りながら振り返って部屋の内を見やった。――頽れかかる壁と、腐れた畳と、煤けた柱と、散らばり放題に散らばった書冊と、山のような書き反古と、惨憺たる食器とを。
「これがこの傑作を書いた部屋だ」
青年はそう呟くと、フランスの傑作はすべて屋根裏から生れた、と云う言葉を思いうかべながら、刺すような寒風の中を大股に、河の方へと歩み去った。
五年経った。
丘と木とにかこまれた二階家に、青年は妻と二人の子と生活していた。