Classici giapponesi con furigana
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さけさかずきとっくり
酒・杯・徳利
山本 周五郎
Leggi 酒・杯・徳利 (さけさかずきとっくり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4047 caratteri · 9 schermate
二階の部屋は終日明るく日がさし、窓の外には――狡猾な家主が借り手を誘き寄せる為に無理をして植えた――松が枝をさしのべている。
青年は机に向って酒を呑んでいる、秋の午後の強い光が、西の窓にかっとさしつけて、安手の窓帷の縞を青年の横顔に染めつけている。五年前、漁夫の廃屋に積んであった書冊はどこへやったのか、床間には四五の小説本と辞書、それに壊れたセルロイドの玩具が、ぽつんとひとつ置き忘れてあるばかりだ。あの大きな、畳一帖ほどもある机の代わりに、今は擬紫檀の卓子が居心地悪く据えられ、その隅には洒落た硝子のインク壺がきれいに拭われて置いてある。
青年は焼きの良い燗徳利を取り上げた、青磁色の盃に、匂い高く澄んだ美酒がつがれる、投げ売り物の錦手の鉢には鯛の刺身があり、小皿には妻君にがみがみ言って作らせた芋棒が、体裁よく盛られてある。もはやあの手製の五つの書架はない、しかし桑の小綺麗な茶箪笥があり、壁にはゴッホの複製画が掛けてある。青年は綿の厚く入った座蒲団に坐り、紬織りの袷を着て錦紗の帯をしめている。
青年はふと盃を措いた、そして左手で書きかけの原稿用紙をひき寄せ、覗き込むようにしながら読み始めた。