Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

のわき

野分

山本 周五郎

Leggi 野分 (のわき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.401 caratteri · 42 schermate

Aozora Bunko

又三郎はそこでふと言葉を切った。

きょうは約束の日である。蔦萬の二階の馴染の部屋で、藤七とおちあって半刻あまり、運ばれて来た酒肴にも殆んど手をつけず、苦いものを飲むような調子でここまで語ってきたが、彼の舌はいよいよ重く、調子はますます沈むばかりだった、「……だが会ってみると、やっぱり親子の情などは感じられなかった」と彼はしずかに言葉を継いだ。

「もちろんそれはそれでいい、おれはすぐに云いたいことを云った、跡目に直ることは云うまでもない、さっぱりと武士をやめて町人になるということを、爺さんのことも云った、お紋のことも隠さずに云った、そして人間らしく正直に、つつましく生きたいということを」

又三郎はそこで眼をつむった。そのときの父の顔がありありと思い浮んだのである、六十三歳になる正陟はもう髪も白く、皮膚のたるんだ頬にも、緊りのなくなった唇つきにも、もの憂げな、力のないまなざしにも、年齢より遙かに老衰の色が甚だしかった。……又三郎の云うことを聞き終ると、正陟は、「みな遠慮せよ」と、侍臣をすべて遠ざけ、こちらへ寄れと又三郎を身近に招いた。

――おまえの云うことはよくわかった。