Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やこ

野狐

田中 英光

Leggi 野狐 (やこ) di 田中 英光 (たなかひでみつ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.615 caratteri · 39 schermate

Aozora Bunko

そして党を憎むよりも自分を憎んだ。自分が裏切者、不義士の張本のように思われ、醜悪にみえて仕方なかったのである。

そして家に帰って、文学三昧に戻ってみたが、すでに終戦後の作家飢饉で、多くの流行作家が世に出た後では、私は、いわゆる、バスにのりおくれた形で、持込みの原稿もなかなか売れなかった。その私の悪戦苦闘に対しても、妻は一向、同情しなかった。ヤケになった私は将来、私に余裕ができたら、別に愛人を作ってもよいかと、妻に尋ねると、妻は冷然と、(ええ、お金さえ下さればお父さんなんか家にいなくてもいいわ)といった。

ところが、その幾らかの余裕のできるようになった頃、私は前のような事情で、桂子と知り合いになった。桂子は、前に同棲していた異国人のおかげで、バラックながら一軒の家を持っていた。私はそこに転がりこんだ形になったのである。

桂子も私に幾つかの嘘を吐いていた。年も五つばかり若く言い、学校も女学校を出ているなぞいったが、例えば十二の八倍が幾つになるかの暗算さえできなかった。彼女は貧農の娘、しかも不義の子として生れたのである。幼時、煙草畑の草取りがいかに苦しかったか、一晩中、叱責され、土間に立たされていて、蚊に責められた思い出なぞを私に語ったこともある。