Classici giapponesi con furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Leggi 野菊の墓 (ななこ) di 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.271 caratteri · 144 schermate
おはまは笑いながら、徳利を持って出た帰りしなに、そっと省作の肩をつねった。
「まあよく考えてみろ、おとよさんは少しぐらいの財産に替えられる女ではないど。そうだ、無論おとよさんの料簡を聞いてみてからの事だ。今夜はこれで止めておく。とくと考えておけ」
兄は見かけによらず解った人であった。まだ若年な省作が、世間的に失敗した今の境遇を、兄は深く憐んだのである。省作の精神を大抵推知しながら先を越して弟に元気をつけたのである。省作は腹の中で、しみじみ兄の好意を謝した。省作は今が今まで、これほど解ってる人で、きっぱりとした決断力のある人とは思わなかった。省作はもう嬉しくて堪らない。だれが何と言ってもと心のうちで覚悟を定めていた所へ、兄からわが思いのとおりの事を言われたのだから嬉しいのがあたりまえだ。省作はあらん限りの力を出して平気を装うていたけれど、それでもおはまには妙な笑いをくれられた。省作は昨日の手紙によって今夜九時にはおとよの家の裏までゆく約束があるのである。
三
女の念力などいうこと、昔よりいってる事であるが、そういうことも全くないものとはいわれんようである。