Classici giapponesi con furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Leggi 野菊の墓 (ななこ) di 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.271 caratteri · 144 schermate
「省さん、わたしは嬉しい」
ようよう一こと言ったが、おとよはまた泣き伏すのである。
「省さん、あとから手紙で申し上げますから、今夜は思うさま泣かしてください」
しどろもどろにおとよは声を呑むのである。省作はとうとう一語も言い得ない。
悲しくつらく玉の緒も断えんばかりに危かりし悲惨を免れて僅かに安全の地に、なつかしい人に出逢うた心持ちであろう。限りなき嬉しさの胸に溢れると等しく、過去の悲惨と烈しき対照を起こし、悲喜の感情相混交して激越をきわむれば、だれでも泣くよりほかはなかろう。
相思の情を遂げたとか恋の満足を得たとかいう意味の恋はそもそも恋の浅薄なるものである。恋の悲しみを知らぬ人には恋の味は話せない。
泣いて泣いて泣きつくして別れた二人には、またとても言い表すことのできない嬉しさを分ち得たのである。
五
翌晩省作からおとよの許に手紙がとどいた。
「前略お互いに知れきった思いを今さら話し合う必要もないはずですが、何だかわたしはただおとよさんの手紙を早く見たくてならない、わたしの方からも一刻も早く申し上げたいと存じて筆を持っても、何から書いてよいか順序が立たないのです。