Classici giapponesi con furigana
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のはぎ
野萩
久生 十蘭
Leggi 野萩 (のはぎ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.480 caratteri · 21 schermate
急に陽が翳って、湿った潮の香にまじった苔の匂いが、冷え冷えと座敷にしみとおってきた。杜松が坐っているあたりは、いっそう蔭が深くなり、着物のくすんだ地色がしっとりと沈み、白い膚の色が浮きだすようにあざやかに見えた。
ふだんの滋子なら、すぐ気がつくのに、いままで見すごしていたのが、ふしぎなくらいだった。見てみると、三十歳ぐらいのひとの着付だが、十八、九の若さで、ちっともおかしくないというのは、これは、たいへんなひとなのだと思った。
「失礼ですけど、そのお衣裳、結構な地色ですことね」
杜松は、どこか薄青い深い眼付で、滋子を見ながら、
「おほめをいただきまして、ありがとうございます。でも、これは母のおさがりですのよ。いちど、ちょっと日本へ帰ったときにつくったんだそうですけど、この着物が好きで、日本へ帰ることがあったら、これを着て帰るようにって、よく、あたしにそうもうしましたので、きょう思いきって着てみましたの……でも、三十年というと、たいへんなデモードね」
「あなた、巴里のキャンプで、伊作といっしょでしたって?」
「十二人の方と、おなじキャンプに七十日ばかりおりましたが、山住さんには、たいへんに、お世話をいただきました。