Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぎんさんじゅうまい

銀三十枚

国枝 史郎

Leggi 銀三十枚 (ぎんさんじゅうまい) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 35.863 caratteri · 73 schermate

Aozora Bunko

「へえへえ」と私は手を揉んだ。

「旦那様え、何かご用で?」

乞食の稽古をやり出した。

17

「貴郎はここのご主人で?」

その洋服の紳士は云った。

「へえへえ左様で、昔はね。今は立ん棒でございますよ」

その紳士は微笑した。

「奥様からのお伝言で。あるよい家が目つかりましたので、昨日お移りなさいましたそうで。それで、お迎えに参りました」

「一体貴郎様はどういうお方で?」

「へい、タクシの運転手で」

「すぐ載っけろ! 馬鹿野郎!」

街に落つる物の音

雨にはあらで落葉なる

明るき蒼き瓦斯の燈に

さまよう物は残れる蛾

廃頽詩人ヴェルレイヌ、卿だけだ! 知っている者は! 秋の呼吸を、落葉の心を、ひとり死に残った蛾の魂を。

私のタクシは駛っていた。

街路樹がその葉をこぼしていた。人々は外套を鎧っていた。寒そうに首をすっ込めていた。冬がそこまで歩いて来ていた。白無垢姿の冬であった。

「俺も長い間苦しんだなあ」

クッションへ蹲って考えた。

「もう堪忍してくれないかなあ」

私はじっと瞑目した。

「でなかったら葬ってくれ。落葉がいいよ、朴の落葉が」

私のタクシは駛っていた。

「泣けたらどんなにいいだろう」