Classici giapponesi con furigana
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ちんじょうしょ
陳情書
西尾 正
Leggi 陳情書 (ちんじょうしょ) di 西尾 正 (にしおただし) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.750 caratteri · 38 schermate
其の部屋は茶ノ間と覚しく凝乎耳を澄ますと鉄瓶の沸る音がジィンジィンと聞え、部屋には最初の男を加えて三四人は居るものと想像され、時折大きな影法師がユラリユラリと其の丸窓に映るのであります。暫くの間私を案内した男は其の宿の内儀と、――多分斯う想像するのですが、――周旋料に就いて小声で秘鼠秘鼠と相談し合って居る様子でありました。何事か符牒を用いて争って居るらしいので有ります。動ともすると両者の声の高まる所から想像すると、話が仲々妥協点に達しないらしく時折内儀の叩くらしいぽんぽんと響く煙管の音が癇を混えて聞えて参ります。私は所在無さに室内の空気に好奇心を覚え障子の隙間に片眼を当てて、ついふらふらと内部を覗いて了いました。私の想像した通り、隙間の正面には、長火鉢の傍らに四十格好の脂肪肥りにでっぷりした丸髷を結った内儀が煙管を弄び乍ら悠然と控えて居るのが見え、右手に坐って居る男、――是は見えませんでしたが内儀の視線の方向からそれと想像されます、――に向って熾んに捲し立てて居るのであります。内儀の隣りに、即ち私の方から向って左手に、正しくもう一人の女が居る事が想像されました。