Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちんじょうしょ

陳情書

西尾 正

Leggi 陳情書 (ちんじょうしょ) di 西尾 正 (にしおただし) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.750 caratteri · 38 schermate

Aozora Bunko

あの夜の妻の行動に就いて問い質した所、彼女は無論夜半外出した事も無く、近所の家から依頼された縫物を終ると其の儘朝まで寝入って居たとの返事を、何の憶する所無く淡々述るので有りました。若し房枝があの夜のおふささんで有るならば、私の硬直発作を目撃した筈でありまして、左様だとすれば到底斯くの如き平静な答弁は為し得る筈が無く、尚更、房枝の水仕事にかさかさに成った両手を見るに及んで、動ともすれば私の疑惑は晴れかかるので有りました。此の醜い手が、あのなよなよした真白い指に変わり得る事は不可能と考えねばなりません。閣下は、奇妙な一夜の出来事を逐一妻に語り聞かせて率直に返事を聞き取り、疑いを晴らそうとしなかった私の不注意を詰られる事で有りましょう。然し、私は私で、何としてもだにの様にこびり付いた猜疑の心を払い切る事が出来ず、聊も此方の心を悟られない様注意を配り、其の油断を見済せてのっぴきならぬ確証を掴んだ上出来る丈の制裁を加えてやろうと深く企らむ所があったのであります。

御推察通り、房枝の生活には何の変哲も見られませんでした。其処で私は第二段の予定行動として、当夜の敵娼の言を頼り、毎夜終演迄の三十分間を、――浅草の寿座の楽屋裏に身を潜める事に致しました。