Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ずいひつ しほんたいへいき

随筆 私本太平記

吉川 英治

Leggi 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.947 caratteri · 114 schermate

Aozora Bunko

出かけて、観心寺、水分神社、楠妣庵などを中心に、あの附近を一日じゅう、濡れ歩いてみたわけだった。

次の帖を「菊水帖」とするか否かには、じつのところ、少々迷った。

この象徴には、どうも理窟なしに、かつての極端な指導者の軍国利用や虚構の翳がさす。そんな先入主と混同されては、迷惑だし、小説にも失望されよう。で、楠木帖、ちはや帖、何々帖とならべてみたが、正成を書く以上、題語などは、五十歩百歩、文芸的には何の内容関係もない愚と覚った。

素心で見れば「菊水帖」は字ヅラもきれいだし、語感もよい。正成を書くにしても、私はただ、文学的素心で自分の正成を書くしか方法はないのである。

正成ほど、史家を悩ませる人はあるまい。

かつては、余りに神格化されすぎた大楠公だったし、近来の研究では、その人を人間として息吹き返させる史料にも、じつに乏しい。家系、職掌、人となりにも、不明が多く、彼のはっきりした姿は、笠置に召されてから、湊川の合戦で、尊氏の軍に当って死ぬまでの、六年間に見られるのみだ。

けれど、彼にも生まれたところの山河がある。山河に偽色はない。大阪から車で約二時間ちょっと。