Classici giapponesi con furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Leggi 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.947 caratteri · 114 schermate
その八
未曾有なヒデリもあり大颱風もそこにはあったが、善意の人間の一脈だけは、今日にも流れ続いている。正成や尊氏は、いわば颱風時代に揉まれた生命中の巨なるものだ。官賊の別や功罪の論などは、私本太平記の任ではない。揉みに揉まれた荒天の下の生命それぞれを書いてゆきたい。出来ることなら、その颱風の眼を、筆のさきでとらえてみたい。(三三・八・四)
その八
「菊水帖」になって、三十回ほどになる。
「楠木正成はいつ出るのか」と、ままきかれるが、増鏡や古典太平記では、後醍醐天皇が笠置落ちのさい、天皇の夢告から、こつねんと召されて出て来る正成である。しかし、現代の読者には、やはり人間正成の出現でなければ心から受けとれまい。それが「菊水帖」の主要テーマなのだから、いささか、私も私なりにここは構造を凝らしてみたい。
まいどの繰り言だが、正成の前半生には、殆ど信じるに足るほどな史料は皆無に近い。
ならば、小説的な空想にはかえって都合がよさそうなものだが、昨日までの日本史では大楠公としてきた過去の忠誠の象徴である。いたずらに、偶像をやぶるだけが能でもないし、それだけでは意味もない。乏しい史料をも、ていねいに、再検討して、ややうなずける人間正成をこの「私本」