Classici giapponesi con furigana
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うんもへん
雲母片
宮本 百合子
Leggi 雲母片 (うんもへん) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2525 caratteri · 6 schermate
わかい、気のやさしい春は
庭園に美しい着物を着せ
――明るい時――
林町の家の、古風な縁側にぱっと麗らかな春の白い光が漲り、部屋の障子は開け放たれている。室内の高い長押にちらちらする日影。時計の眩ゆい振子の金色。縁側に背を向け、小さな御飯台に片肱をかけ、頭をまげ、私は一心に墨を磨った。
時計のカチ、カチ、カチカチいう音、涼しいような黒い墨の香い。日はまあ何と暖かなのだろう。
「ああちゃま、まだ濃くない?」
母は、障子の傍、縁側の方に横顔を向け、うつむいて弟の縫物をしていた。顔をあげず、
「もう少し」
丸八の墨を握ったまま、私はぴしゃ、ぴしゃ硯を叩いて見た。自分の顔は写らないかと黒い美しい艷のある水を覗いた、そしてまた磨り始める。
何処かで微かな小鳥の声。
見えないところに咲いている花の匂いが、ぽかぽかした、眠くなる春の光に溶けて流れて来るようだ。
彼方側の襖の日かげがゆれて母が立って来た。
「もういいだろう?」
私は、墨で硯の池の水を粘らせて見た。
「どろどろでなくっていいの?」
「この墨は、灰墨じゃあないから、そんなにどろどろにはならないよ。半紙は?」