Classici giapponesi con furigana
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きりのばんしゃ
霧の蕃社
中村 地平
Leggi 霧の蕃社 (きりのばんしゃ) di 中村 地平 (なかむらちへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.389 caratteri · 57 schermate
生蕃の女を妻としていることが、彼らに対して肩身のせまい思いがし始めてきたのである。
眉間に十の字に、両頬に耳から口へかけて大きくながれるように刻みこまれてある青い入墨も、山の原生林や、渓谷や、素朴な蕃社を背景に眺めてこそ、始めての魅力である。日本の服を着せ、白昼の明るい町なかに置いてみれば、化けものとしか映りはしない。広い、新開の町の通りを二人がいっしょに歩く時、妻のテワスは内地風の浴衣を着て、脚どりも軽くいそいそと夫のあとからついてくる。すると、行き摺る行人の誰彼は、好奇な色を露骨な表情で、テワスの顔を覗きこむのである。それからまるで見くらべでもするもののように、改めて近藤の顔に視線を移す。近藤はそのたびに、そういう行人をなぐりつけたい憤りに駆られる。しかし、妻は平気なもので、無邪気にもありありと得意げに、いっそうその逞しい体を夫にすり寄せてくる。蕃人の体からだけ発散する一種異様な匂いがぷんと鼻をついてくるのである。
植民地の警察官吏は一般の風習として、しばしば上司の家へ出入りするのが普通である。正月や、その他の祭り日は特に大変で、大抵は妻君同伴で上役の家に御機嫌を奉伺しなければならない。