Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Leggi 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.593 caratteri · 325 schermate

Aozora Bunko

すると、大きな涙がぽたぽたと畳の上に落ちた。泣声をあとに、軽部は憂鬱な散歩に出掛けた。出しなに、ちらりと眼に入れた肩の線がそんな話のあとでは一層悩ましく、ものの三十分もしない内に帰って来ると、お君の姿が見えぬ。火鉢の側に腰を浮かせて、半時間ばかりうずくまっていると、

――魂抜けて、とぼとぼうかうか……、

声がきこえ、湯上りの匂いをぷんぷんさせて、帰って来た。その顔を一つ撲って置いてから、軽部は、

「女いうもんはな、結婚まえには神聖な体でおらんといかんのやぞ。キッスだけのことにしろやね、……」

言い掛けて、いつかの苦い想出がふっと頭に来た。何か矛盾めくことを言うようだったから、簡単な訓戒に止めることにした。軽部はお君と結婚したことを後悔した。しかし、お君が翌年の三月、男の子を産むと、日を繰ってみてひやっとし、結婚して置いて良かったと思った。生れた子は豹一と名付けられた。日本が勝ち、ロシヤが負けたという意味の唄が未だ大阪を風靡していたときのことだった。その年、軽部は五円昇給した。

同じ年の暮、二ツ井戸の玉突屋日本橋クラブの二階広間で広沢八助連中素人浄瑠璃大会が開かれ、聴衆約百名、随分盛会だった。