Classici giapponesi con furigana
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かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Leggi 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.653 caratteri · 73 schermate
それは怪談の一種であるとして取扱われていた。人影もない深夜の東京の焼跡の街路を、一つのトランク鞄がふらりふらりと歩いていた、そのトランクを手に下げている人影も見当らないのに、トランクだけが宙をふわりふわりと揺れながら向こうへ行くのを見たというのだ。
もし事実なら、奇々怪々なる出来事だといわなければならぬ。
その怪事の目撃者というのは、焼跡に建っている十五坪住宅の主人で、昼間は物品のブローカーをしている人だったが、その人が夜中厠へ入って用を足しながら何気なく格子の外を覗いた、折柄二十日あまりの月光が白々と明るく一面の焼跡と街路を照らしていたが、そこへ突然かのトランクが現われて、主人の目の前をすたすたゆらゆらと通り過ぎていったのだそうな。
「寝呆けていたんじゃねえよ。へん、この世智辛い世の中に誰が寝呆けていられますかというんだ。信用しなきゃいいよ。とにかくおれは、ちゃんとこの二つの眼で鞄の化物を見たんだから……」
と、その目撃者はたいへん自信に充ちて放言したという。
だが、およそ常識のある者なら、かの自称目撃者の言葉を信じようとはしないだろう。奴凧や風船なら知らぬこと、重いトランクが横に吹き流れて行くとは思われない。