Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.527 caratteri · 23 schermate
「先生、御膳になさい」
腹がへるとのそのそ起上ることにきまっている。部屋ではこの辺の呼吸はちゃんと心得ている。もっとも、鯛の刺身などつくわけではない。この世界なみに、たいてい眼刺か煮〆。顎十郎は、うむとも言わずにめしを喰い出す。飯を喰いおわると、お先煙草を一服二服。窓から空を見上げながら、
「だいぶ、涼気が立って来たの」
てなことを、のんびり言っておいて、またごろりと横になろうとするところへ、ひとりの中間が、先生、お手紙、といって封じ文を持って来る。
顎十郎は受取って、
「これは、けぶだの。俺に色文をつける気ちがいなどはねえはずだが……」
ゆっくりと封じ目をあけて読み下していたが、無造作に手紙を袂の中に突っこむと、
「ほう、こりゃア、ひょっとすると喧嘩かな。いやはや、どうも弱ったの」
と、ぼやきながら、剥げちょろの脇差をとりあげ、のっそりと上り框のほうへ歩いてゆく。耳早なひとりが聞きつけて、
「先生!」
と、気負い立つと、顎十郎は、
「あん」
と、不得要領な声を出しておいて、長い顎をふりふり小屋のそとへ出て行った。
指定された坂下の水茶屋までやって行くと、よしずの蔭の縁台で、藤波友衛とせんぶりの千太が物騒な眼つきでこちらのほうを眺めている。