Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.783 caratteri · 22 schermate
つい今しがた来たのだ。さきほどまではこの近くに姿は見えなかった。
無反の長物を落差しにし、右を懐手にして、左手で竿をのべている。月代は蒼みわたり、身なりがきっぱりとしているから浪人者ではあるまい、相当の家中と見わけられるのである。
ひょろ松は、さすがに心得のあるもので、上汐を見るふりで眼の上に翳した手の間からまじまじとそのさむらいを眺めていたが、さり気ないようすで顎十郎のほうへふりかえると、
「阿古十郎さん、あれが?」
と、眼差で鋭くたずねる。
そのくせ腰のひねりは岸のほうへ廻りこんでいて、さむらいものの退路を断つような構えになっている。なりわいといいながら、さすがに隙のないことであった。
顎十郎は、うむ、とうなずいて、
「今に釣れるから、そうしたら、よッく竿の先を見ていろ、眼をはなすな。……言うがにまさる、いやおうなく、なっとくのいくことがある」
「へえ」
といって、ひょろ松、餌をつけかえて鈎を沖に投げこみ、腰をひねって竿の先をさむらいもののほうに向け、凝ったようになって向うの竿先をにらみ始める。目通しにこちらの竿の先と向うの竿の先が一点になって。