Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9707 caratteri · 20 schermate

Aozora Bunko

……それはそうと、妙なのはそれだけか。眼のくり玉をすえて、もう一度、よく見ろ」

ひょろ松は、ためつすがめつ大黒絵を眺めていたが、

「あります、あります。……なるほど、妙なところがある。……大黒様の左肩に、矢羽根のようなものが微かに見えるが、矢をせおった大黒様とは珍らしい」

「ひょろ松、縁起まわしの刷物には、鼠がなん匹いたっけな」

「きまってるじゃありませんか、二匹です」

「この大黒様にはなん匹いる」

「なるほど、こりゃアけぶだ。……俵のうしろから鼻のさきを出しているのがある。……ひい、ふう、みい、よ……みんなで、四匹おります」

ひょろ松は、眼をかがやかして、

「こりゃア、どういう洒落なんです。これが、今度のいきさつに、なにかひっかかりがありますんでしょうか」

聞えたのか聞えぬのか、顎十郎、なんの返事もしない。長い顎をふって、あちこちと河岸っぷちの景色を眺めながら、ぶらりぶらりと歩いてゆく。

蠣殻町の浅野の屋敷のまえを通り、川っぷちをつたいながら弥太堀の近くまで行くと、蔵屋敷のならびの大黒堂の横手に、五十ばかりの汚い布子を着た雪駄直しが、薄い秋の日だまりのなかでせっせと雪駄をつくろっている。