Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ふうちそう

風知草

宮本 百合子

Leggi 風知草 (ふうちそう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 44.107 caratteri · 88 schermate

Aozora Bunko

太平洋戦争がはじまる前まで、新交響楽団の定期演奏会は前売切符を会員に送った。その時分にひろ子もよくききにゆき、山沼というその青年も、大抵ききに来ていた。音楽をきいた帰りに、お茶をのみに歩いたりしても、山沼は、或る種の若い人のするような話しぶりをせず、いつも落付いた科学者であった。山沼に会ったのは古くて、ひろ子の友達の長男と同級のよしみで、落ちあったのが縁であった。こういう青年も、今はこの場所に来ている。しかも、受付にかたまって、若い人々の中にいたときの空気でみれば、山沼はおそらく、ひろ子などよりはるかにここに近く暮しはじめている様子だった。

「何年ぶりでしょう。――お元気でいいわね」

「石田さん、体どうですか」

山沼は、やはり、もとの通りやさしく、しかし必要なことしか云わなかった。

「じゃあ、また」

「お元気で。よろしく」

ひろ子は、待っていた牧子と一緒になった。純吉は、暗いし眠いし歩けなくなって、牧子におんぶされている。

「失礼ですがあの方、よく御存じですか?」

しめりはじめた草むらが匂う道を歩きながら牧子がきいた。

「よくって云えるかどうかしらないけれど――なあぜ?」