Classici giapponesi con furigana
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かぜたちぬ
風立ちぬ
堀 辰雄
Leggi 風立ちぬ (かぜたちぬ) di 堀 辰雄 (ほりたつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 54.998 caratteri · 108 schermate
私はその樅の木からさえ、心ならずも立ち去った。
十二月七日
集会堂の傍らの、冬枯れた林の中で、私は突然二声ばかり郭公の啼きつづけたのを聞いたような気がした。その啼き声はひどく遠くでしたようにも、又ひどく近くでしたようにも思われて、それが私をそこいらの枯藪の中だの、枯木の上だの、空ざまを見まわせさせたが、それっきりその啼き声は聞えなかった。
それは矢張りどうも自分の聞き違えだったように私にも思われて来た。が、それよりも先きに、そのあたりの枯藪だの、枯木だの、空だのは、すっかり夏の懐しい姿に立ち返って、私の裡に鮮かに蘇えり出した。……
けれども、そんな三年前の夏の、この村で私の持っていたすべての物が既に失われて、いまの自分に何一つ残ってはいない事を、私が本当に知ったのもそれと一しょだった。
十二月十日
この数日、どういうものか、お前がちっとも生き生きと私に蘇って来ない。そうしてときどきこうして孤独でいるのが私には殆どたまらないように思われる。朝なんぞ、煖炉に一度組み立てた薪がなかなか燃えつかず、しまいに私は焦れったくなって、それを荒あらしく引っ掻きまわそうとする。