Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しょくま

食魔

岡本 かの子

Leggi 食魔 (しょくま) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.911 caratteri · 74 schermate

Aozora Bunko

「こりゃ、うまいや、ばかにしとらい」

鼈四郎は、何ともいいようのない擽ったいような顔をした。

霰を前髪のうしろに溜めて逸子が帰って来た。こどもを支えない方の手で提げて来たビール壜を二本差出した。

「さし当ってこれだけ持って参りました。あとは小僧さんが届けて呉れるそうでございますわ」

鼈四郎はつねづね妻にいい含めて置いた。一本のビールを飲もうとするときにはあとに三本の用意をせよ。かかる用意あってはじめて、自分は無制限と豪快の気持で、その一本を飲み干すことができる。一本を飲もうとするときに一本こっきりでは、その限数が気になり伸々した気持でその一本すら分量の価打ちだけに飲み足らうことができない。結局損な飲ませ方なのだ。罎詰のビールなぞというものは腐るものではないから余計とって置いて差支えない。よろしく気持の上の後詰の分として余分の本数をとって置くべきであると。いま、逸子が酒屋へのビール注文の仕方は、鼈四郎のふだんのいい含めの旨に叶うものであった。

「よしよし」と鼈四郎はいった。

彼は妻に、本座敷へ彼の夕食の席を設ることを命じた。これは珍しいことだった。妻は