Classici giapponesi con furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Leggi 食魔 (しょくま) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.911 caratteri · 74 schermate
その態度は物の味の試しを勧めるというより芝居でしれ者が脅しに突出す白刃に似ていた。
お千代はおどおどしてしまって胸をあとへ引き、妹へ譲り加減に妹の方へ顔をそ向けた。
「おや。――じゃ。さあ」
鼈四郎はフォークを妹娘の胸さきへ移した。
お絹は滑らかな頸の奥で、喉頭をこくりと動かした。煙るような長い睫の間から瞳を凝らしてフォークに眼を遣り、瞳の焦点が截片に中ると同時に、小丸い指尖を出してアンディーヴを撮み取った。お絹の小隆い鼻の、種子の形をした鼻の穴が食慾で拡がった。
アンディーヴの截片はお絹の口の中で慎重に噛み砕かれた。青酸い滋味が漿液となり嚥下される刹那に、あなやと心をうつろにするうまさがお絹の胸をときめかした。物憎いことには、あとの口腔に淡い苦味が二日月の影のようにほのかにとどまったことだ。この淡い苦味は、またさっき喰べた昼食の肉の味のしつこい記憶を軽く拭き消して、親しみ返せる想い出にした。アンディーヴの截片はこの効果を起すと共に、それ自身、食べて食べた負担を感ぜしめないほど軟く口の中で尽きた。滓というほどのものも残らない。
「口惜しいけれど、おいしいわよ」