Classici giapponesi con furigana
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きがちたいをあるく
飢餓地帯を歩く
下村 千秋
Leggi 飢餓地帯を歩く (きがちたいをあるく) di 下村 千秋 (しもむらちあき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.478 caratteri · 31 schermate
自動車は吹雪をついて走っている、人々はそれで黙ったが、この時、うしろの方で、パンという音がした。
「畜生奴、とうとうパンクしちめえやがった」
運転手は、パンクを予期してたもののようにそう言って、車を止めた。宿屋のある蟹田村まではまだ一里半ほどある。この吹雪の中を歩いて行ける筈はなし、車の中のものは、私を合せて四人、道路に面した或る百姓家の中へ避難したのであった。
家の中の暗さ惨めさは、浦野館村の百姓家と変りがなかった。私達は、上り框の炉端へ、足を踏み入れて火にあたった。
しばらくすると、風が少し静まった。二人の男は、五六丁先が自分の家だからと言って、穏やかになりかけた吹雪の中を出て行った。残ったのは、私と、五十歳ほどの老婆である。その老婆は、蟹田村から更らに一里近く山手に入った小国村のものであった。私はこの老婆と、その一夜を炉端で明したのだが、老婆は、私を相手にさまざまの身の上話をした末に、
「実は今日は、娘を、青森市のごけ屋(私娼の家)へ置いて来たのです」という意味を、方言で話し出たのであった。
何故娘をそんな所へ置いて来たか、それを今更ら尋ねる必要はない。