Classici giapponesi con furigana
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すし
鮨
岡本 かの子
Leggi 鮨 (すし) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.272 caratteri · 26 schermate
それから後は、茲のアパート、あちらの貸家と、彼の一所不定の生活が始まった。
今のはなしのうちの子供、それから大きくなって息子と呼んではなしたのは私のことだと湊は長い談話のあとで、ともよに云った。
「ああ判った。それで先生は鮨がお好きなのね」
「いや、大人になってからは、そんなに好きでもなくなったのだが、近頃、年をとったせいか、しきりに母親のことを想い出すのでね。鮨までなつかしくなるんだよ」
二人の坐っている病院の焼跡のひとところに支えの朽ちた藤棚があって、おどろのように藤蔓が宙から地上に這い下り、それでも蔓の尖の方には若葉を一ぱいつけ、その間から痩せたうす紫の花房が雫のように咲き垂れている。庭石の根締めになっていたやしおの躑躅が石を運び去られたあとの穴の側に半面、黝く枯れて火のあおりのあとを残しながら、半面に白い花をつけている。
庭の端の崖下は電車線路になっていて、ときどき轟々と電車の行き過ぎる音だけが聞える。
竜の髭のなかのいちはつの花の紫が、夕風に揺れ、二人のいる近くに一本立っている太い棕梠の木の影が、草叢の上にだんだん斜にかかって来た。ともよが買って来てそこへ置いた籠の河鹿が二声、三声、啼き初めた。