Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
弦之丞は思った。
この女が自分に求めてやまぬものは、ただ強い抱擁ではないか。熱病のような本能の情炎が、またそれをあおる癆咳という美しき病の鬱血が、たまたま自分という対象に燃えているだけなのではないか。
剣山へ行きつくまでの難関を、お米に手びきさせることは、いい策には違いないと思ったが、目的のためとはいえ、果たして、そこまで悪魔的な気持がもち続けられるか、またこの放縦な恋の病人を、それまであやつって行ききれるかどうかという点は、弦之丞の性格にはなはだ自信が乏しかった。
ジーと目をつぶって考えた。
お米の手を抱えたまま――。そして、お米は、その手くびのしびれを忘れて、うっとりと、弦之丞の顔を見まもっていた。
すると。
向うの小松林の間を、明るい帯の色がチラと通りぬけてくる。誰かと思うと、それは見返りお綱であった。
何かにわかな用でも起こったらしく、船宿から弦之丞をさがしに来たお綱は、思いがけない男と女のたたずみを見て、はッとしたように、松の木のかげへ足をすくめた。
うつつなお米の腕を脇の下へ抑えたまま、弦之丞は横あゆみに数歩、人目のうれいなき木蔭まで連れてきた。