Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
で、新吉は、ホッと顔を上げながら、
「何だろう、あの侍は?」
と見送った。
が、すぐにまた新吉もそこを出て、船のほうへ打合せに駈けだしていた。なにせよ、纜を解く混雑まぎわに、八方で光る眼をくらまし、首尾よく三ツのつづらを船底へ持ち込もうという危ないからくり、並大抵な気苦労ではない。
もうそろそろ時刻の五刻半に近づいてきた気配、ざわめいていた船のほうも割合にヒッソリしてきた。
ただ、提灯の灯だけは船岸の近くにうようよとうごいている。
爽やかな風が空を吹き廻っている。星月夜だ。五月にしては珍らしい空。
このあんばいでは、海も順風、鳴門の浪にも大してもまれることはなかろう、まず、船出の幸先は上々吉だ。
けれど、その海へ乗っ切るまでに、何ぞ、予想もつかぬような大暴雨がやってこないとはいいきれない。今――その十万坪あまりの埋地の闇はひとつの廻り燈籠になった、三ツのつづらを心棒に、あまたの覆面や怪しげな編笠や、宅助や新吉や、そしてなお幾人もの影が、グルグル廻っているのだから……
これもその廻り燈籠の影絵の一ツ。
昔、楼の岸にあった古柳の名残とかいう空井戸の側に、夜目にもしるきといいたい女が、褄を折って腰帯に結び、手拭の端をつまんで姉様冠りをしなおしている。