Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
――右兇状の女スリ上方すじへ立廻りたる形跡これあり似より下手人召捕りのせつは人相書照合一応江戸南町奉行まで示達あるべきもの。
「あっ……」
お千絵は針で突かれたような記憶をさました。
駿河台の墨屋敷で、すでに焼け死ぬところを助けだしてくれた恩人! あの紅蓮の火をくぐって、切り破った板壁の穴から、「お千絵様!」と呼びかけた顔を、かの女は今まざまざと眼に浮かべて、唇をふるわせた。
「女スリ? ……あのお綱様が、おそろしい女賊? ……」嘘のような気がする。いや、嘘にちがいないとお千絵は信じた。
現に、自分は、弦之丞の消息を忍ぶにつれて、たえず、この女のことをも忘れたことがなかった。なぜかしらぬが、常にある思慕が燃えている。どうかしてもいちど会いたいと念じている。
その女の人相書であろうとは?
「いまわしい……きっと誰かの悪戯であろう」
お千絵様は口惜しく思った。
「鴻山様のお口が洩れたこともあったが、お綱様とおっしゃるお方は、そんな、悪いお人ではないわけじゃ」
細かに破り裂いて、河原へ捨ててしまおうと思ったが、また、この不愉快な人相書も、あの女の似顔と思えば、慕わしい気も起こって、しばらく膝にのせて眺めていた。