Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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がこせんにん

鵞湖仙人

国枝 史郎

Leggi 鵞湖仙人 (がこせんにん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.555 caratteri · 22 schermate

Aozora Bunko

その上を釣船が漕ぐのである。その衣ヶ崎が正面に見えた。

水に突き出た高島城、四万石の小大名ながら、諏訪家は仲々の家柄であった。石垣が湖面にうつっている。

「うむ、いいな、よい景色だ」

武士は惚々と眺め入った。時刻は真昼春日喜々、陽炎が雪消の地面から立ち、チラチラ光って空へ上る。だが山々は真白である。ほんの手近の所まで、雪がつもっているのである。

思い出す木曽や四月の桜狩。

これは所謂翁の句だ。翁の句としては旨くない。だが信州の木曽なるものが、いかに寒いかということが、此一句で例証はされる。昔の四月は今の五月、五月に桜狩があるのだとすると、これは確に寒い筈だ。ところで諏訪も同じである。矢張り木曽ぐらい寒いのである。

侍は婆さんへ話しかけた。

「話はないかな? 面白い話は?」

「へえへえ」

と云ったが茶店の婆さん、相手があまり立派なので、先刻からすっかり萎縮して了って、ロクに返事も出来ないのであった。

「へいへいさようでございますな。……これと云って変った話も……」

「無いことはあるまい。ある筈だ。……それ評判の鵞湖仙人の話……」

こう云った時、手近の所で、ドボーンという水音がした。