Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
たそがれ
黄昏
宮本 百合子
Leggi 黄昏 (たそがれ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.500 caratteri · 29 schermate
別れてから、十五年になることを思えば、彼も、もうよい年寄になっている筈である。けれども、おくめの思い出すのは、いつも三十五歳の男盛りともいうべき良人の姿であった。また、その面影に対して動いて行く彼女の心も、果して五十近い婆(ばばあ)の心持ばかりと云えただろうか。娘等に対すと、本能的に長者らしく働く彼女も独りでに懐(おもい)に沈むと、決して老い朽ちぬ苦労人の述懐ばかりではなかった。
「あの女房子も思わない、金使いの荒い男が、どんなに変って来ているだろう。
大阪の方では、いずれ妻子を持っているのだろうが、どんな暮しをしているのか」
おくめは、早速その沢屋という宿屋に出かけて行き、精(くわ)しくその後の模様を訊きただしたいほどの心持がした。彼のお陰で、自分があれからどれほどの苦労をしたか、思いのたけをかき口説いて、済まないと思わせるまで責め抜いても見たい。
「のぶ子が、あんな間際になってから、不意と父親の居場所を明(あか)したのも、若し会ったら、という念があったからではないだろうか」おくめの胸には、何ともいえない顫えが湧き起った。
「若し万一、男も自分同様独りでいて、若い時分のことも気の毒に思い、それとなく子等を仲に立ててまた、新しく縁を戻したいとでも思っていたら……」