Classici giapponesi con furigana
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こうとう
黄灯
田中 貢太郎
Leggi 黄灯 (こうとう) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.262 caratteri · 21 schermate
玄関の火鉢の傍には一人の書生がいて、それが火鉢に隻肱を突いて睡っていた。
主翁を伴れて来た書生は、そのまま奥の方へ入って往った。主翁はしかたなしにその後から跟いて往った。主翁は何時の間にか廊下を歩いていた。左側に並んだ室には、どの室にも電燈が明るく点いていた。廊下を左に折れ曲って往きあたると、西洋室になって扉が締っていた。書生はそれを開けて入り、隻手で扉を押え、隻手でまた手招きした。主翁は入って見た。
室の中は晩春のように暖かであった。そこには榻があって、髪の黒い、黄いろな顔をした男が、呼吸苦しそうにして左枕に寝ていた。主翁はこれが御病気だと云う伯爵の殿様だなと思った。その枕頭には二人の看護婦が椅子に腰をかけたなりに眠っていた。また榻の脚下になったほうには、絨緞の上に蒲団を敷いて五六人の男が坐っていたが、これも俯向いたり、後の壁に寄っかかったりして眠っていた。
主翁は書生と並んで立った。主翁は己をこんな処へ伴れて来てどうするつもりだろうと思って、そっと書生の顔を見た。主翁は怖れて眼前が眩むように思った。それは数月前に自動車に轢かれて惨死した山脇と云う書生の顔であった。