Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

Leggi 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) di 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 296.741 caratteri · 584 schermate

Aozora Bunko

もしや、あの方自殺なされたのでは、いいえけっして、私がアレキサンドライトを付けた以上……」

その時法水の顔に、サッと暗いものが掃いて、みるみる悩ましげな表情が泛び上っていった。その暗影と云うのは――、たしかに彼の心中に一つの逆説があって、それを今の伸子の言葉が、微塵と打ち砕いたに相違なかった。

「いや、正確に他殺です」と法水は沈痛な声で云ったが、

「しかし、ここへ貴女をお呼びしたのは、ほかでもないのですが、昨年算哲が遺言書を発表した席上から、いったい誰が先に出たのでしょうね」

すでに一年近くも経過しているので、勿論伸子は、一も二もなく頸を振るものと思われていた。ところが、そのいかにも意味ありげな一言が、伸子に何事かを覚らせたと見えた。いきなり、彼女の全身に異様な動揺が起った。

「それは……あの……あの方なのでございますが」と伸子は苦しげに顔を歪めて、云うまい云わせようの葛藤と凄烈に闘っている様子であったが、やがて、決意を定めたかのように毅然と法水を見て、

「いま私の口からは、とうてい申し上げることは出来ません。けれども、のちほど――紙片でお伝えいたしますわ」