Classici giapponesi con furigana
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どんてん
21世紀の日本人へ 永井荷風
永井 荷風
Leggi 21世紀の日本人へ 永井荷風 (どんてん) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.356 caratteri · 51 schermate
自分は外套の襟を立て返したばかりで傘はささず、考えるともなく、池と森とを隔てて、今日の昼過ぎ訪問した根岸の友達の事を考えながら歩いた。
池にのぞむ人家にはもう灯がついている。それが美しく水に映る。自分はありあり友達夫婦の額を照らす、ランプの火影を思い浮べた。火影は実に静かである。静かであるだけ、いかにも鈍い、薄暗い。ああ、恋の満足家庭の幸福というものは、かくまで人間を遅鈍にするものだろうか。一時二人の結婚は到底不可能だと絶望していた時分、二人はまだ外国へ旅立たなかった自分の書斎を、せめてもの会合場にしていた。その頃、彼の女の若い悲しい眼の中には、何という深い光が宿っていたであろう。彼の男の光沢ある唇から出る声の底には、何という強い反抗の力が潜んでいたであろう。ああ、その頃二人は、いかに月の光を愛したか、いかに花の散るのを見て悲んだか。二人は自分と共々、青春に幸多い外国の生活、文学、絵画、音楽、社会主義、日々起る世間の出来事、何につけても、活々した感想を以てそれらを論じた。わずか数年の後、恋の満足を遂げてしまった二人の男女は、自分が質問する日本の衣服の、その後における流行の変遷さえ多くは語らなかった。