Classici giapponesi con furigana
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あだこ
あだこ
山本 周五郎
Leggi あだこ di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.762 caratteri · 46 schermate
「おれはあの娘が好きだったから」と彼は話し続けていた、「あの娘が仕合せであることはうれしい、これは本心だ、しかしそれと同時に、あの娘が自分から去ってしまったこと、この世では決して、自分の妻にすることができないと思うと、――ちょうど少年のころ、堀端で夏の終りの風に吹かれていたときのように、この胸がつぶれるような、なにもかもむなしいという感じにおそわれてしまう」
「なにもかもむなしい」と彼はあざけるように云った、「おそらくおれは、十四くらいの泣き虫の女の子か、六十くらいのぐちっぽい老いぼれのようにみえるだろう、だがどうしようもない、この世にあることはすべてがむなしいと思うこの気持は、自分でもどうすることもできないんだ」
あだこは涙を拭いた。すると黒い顔が斑になり、眼のまわりに白い輪のようなものがあらわれた。あだこは自分の手を見て、指が汚れているのに気づくと、吃驚したように立ちあがり顔をそむけながら奥へ去った。
半三郎はそんなことには気づかず、盃を持ったまま、降りしきる雪を眺めていた。
それから五、六日して、あだこはお針を習いにゆきたい、と云いだした。縫い物は上手じゃあないか、と半三郎が云うと、自分のは田舎流だから、江戸ふうの仕立てかたが習いたいのだ、と云った。