Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いのちのしょや

いのちの初夜

北条 民雄

Leggi いのちの初夜 (いのちのしょや) di 北条 民雄 (ほうじょうたみお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 31.366 caratteri · 63 schermate

Aozora Bunko

しかし一尺も頸が長々と伸びてぶら下がっている自分の死状はずいぶん怪しげなものに違いないと思いだすと、浅ましいような気もして来た。どうせここは病院だから、そのうちに手ごろな薬品でもこっそり手に入れてそれからにした方がよほどよいような気がして来た。しかし、と首を掛けたまま、いつでもこういうつまらぬようなことを考え出しては、それに邪魔されて死ねなかったのだと思い、そのつまらぬことこそ自分をここまでずるずると引きずって来た正体なのだと気付いた。それでは――と帯に頸を載せたまま考え込んだ。

その時かさかさと落ち葉を踏んで歩く人の足音が聞こえて来た。これはいけないと頸を引っ込めようとしたとたんに、穿いていた下駄がひっくり返ってしまった。

「しまった」

さすがに仰天して小さく叫んだ。ぐぐッと帯が頸部に食い込んで来た。呼吸もできない。頭に血が上ってガーンと鳴り出した。

死ぬ、死ぬ。

無我夢中で足を藻掻いた。と、こつり下駄が足先に触れた。

「ああびっくりした」

ようやくゆるんだ帯から首をはずしてほっとしたが、腋の下や背筋には冷たい汗が出てどきんどきんと心臓が激しかった。