Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
「お袋さんが風邪だッて」
「あい」
「そいつァいけねえ。何んなら見舞に行ってやるよ」
「おいらも行くぜ」
「わたしも行く」
「いいえ、もうそんなことは。――」
少しも長く、おせんを引き止めておきたい人情が、互の口を益々軽くして、まるく囲んだ人垣は、容易に解けそうにもなかった。
すると突然、はッはッはと、腹の底から絞り出したような笑い声が、一同の耳許に湧き立った、
「はッはッは。みんな、みっともねえ真似をしねえで、速くおせんちゃんを、帰してやったらどんなもんだ」
「おめえは、春重だな」
「つまらねえ差し出口はきかねえで、引ッ込んだ、引ッ込んだ」
「ふふふ。おめえ達、あんまり気が利かな過ぎるぜ。おせんちゃんにゃ、おせんちゃんの用があるんだ。野暮な止めだてするよりも、一刻も速く帰してやんねえ」
「馬鹿ァいわッし。そんなお接介は受けねえよ」
一同の視線が、春重の上に集まっている暇に、おせんは早くも月の下影に身を隠した。
四
「お母さん」
「おや、おせんかえ」
「あい」
猫に追われた鼠のように、慌しく駆け込んで来たおせんの声に、折から夕餉の支度を急いでいた母のお岸は、何やら胸に凶事を浮べて、勝手の障子をがらりと明けた。