Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
きっとびっくりするなよ」
春重はこういいながら、いきなり真暗な戸棚の中へ首を突っ込んだ。
五
じりじりッと燈芯の燃え落ちる音が、しばしのしじまを破ってえあたりを急に明るくした。が、それも束の間、やがて油が尽きたのであろう。行燈は忽ち消えて、あたりは真の闇に変ってしまった。
「いたずらしちゃァいけねえ。まるっきりまっ暗で、何んにも見えやしねえ」
背伸びをして、三尺の戸棚の奥を探っていた春重は、闇の中から重い声でこういいながら、もう一度、ごとりと鼠のように音を立てた。
「いたずらじゃねえよ。油が切れちゃったんだ」
「油が切れたッて。そんなら、行燈のわきに、油差と火口がおいてあるから、速くつけてくんねえ」
「どこだの」
「行燈の右手だ」
口でそういわれても、勝手を知らない暗の中では、手探りも容易でなく、松五郎は破れ畳の上を、小気味悪く這い廻った。
「速くしてもらいてえの」
「いまつける」
探り当てた油差を、雨戸の隙間から微かに差し込む陽の光を頼りに、油皿のそばまで持って行った松五郎は、中指の先で冷たい真鍮の口を加減しながら、とッとッとと、おもく落ちた油を透かして見たが、さてどうやらそれがうまく運ぶと、これも足の先で探り出した火口を取って、やっとの思いで行燈に灯をいれた。