Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
「何んだッて」
「あすこを御覧なさいまし。ありゃァたしかに、笠森のおせんさんでござんしょう」
「おせんがいるッて。――ど、どこに」
薬研堀の不動様へ、心願があっての帰りがけ、黒八丈の襟のかかったお納戸茶の半合羽に奴蛇の目を宗十郎好みに差して、中小僧の市松を供につれた、紙問屋橘屋の若旦那徳太郎の眼は、上ずッたように雨の中を見詰めた。
「あすこでござんすよ。あの筆屋の前から両替の看板の下を通ってゆく、あの頭巾をかぶった後姿。――」
「うむ。ちょいとお前、急いで行って、見届けといで」
「かしこまりました」
頭のてっぺんまで、汚泥の揚がるのもお構いなく、横ッ飛びに飛び出した市松には、雨なんぞ、芝居で使う紙の雪ほどにも感じられなかったのであろう。七八間先を小きざみに往く渋蛇の目の横を、一文字に駆脱けたのも束の間、やがて踵を返すと、鬼の首でも取ったように、喜び勇んで駆け戻った。
「どうした」
「この二つの眼で睨んだ通り、おせんさんに違いござんせん」
「これこれ、何んでそんな頓狂な声を出すんだ。いくら雨の中でも、人様に聞かれたら事じゃァないか」
「へいへい」
「お前、あとからついといで」