Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
「ふふふ、松五郎は、見かけに寄らねえ忠義者でげすぜ」
独り言をいって顎を突出した松五郎の顔は、道化方の松島茂平次をそのままであった。
八
行水でもつかうように、股の付根まで洗った松五郎が、北向の裏二階にそぼ降る雨の音を聞きながら、徳太郎と対座していたのは、それから間もない後だった。瓦のおもてに、あとからあとから吸い込まれて行く秋雨の、時おり、隣の家から飛んで来た柳の落葉を、貼り付けるように濡らして消えるのが、何か近頃はやり始めた飛絣のように眼に映った。
銀煙管を握った徳太郎の手は、火鉢の枠に釘着けにされたように、固くなって動かなかった。
「ではおせんにゃ、ちゃんとした情人があって、この節じゃ毎日、そこへ通い詰めだというんだね」
「まず、ざっとそんなことなんで。……」
「いったい、そのおせんの情人というのは、何者なんだか、松つぁん、はっきりあたしに教えておくれ」
「さァ、そいつァどうも。――」
「何をいってんだね。そこまで明かしておきながら、あとは幽霊の足にしちまうなんて、馬鹿なことがあるもんかね。――お前さんさっき、何んといったい。若旦那が鯱鉾立して喜ぶ話だと、見世であんなに、大きなせりふでいったじゃないか。