Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate

Aozora Bunko

江戸役者にゃ、情ねえことに、品がねえからのう」

「おや駕籠屋さん。左様にいうたら、江戸のお方に憎まれまッせ」

「飛んでもねえ。太夫を誉めて、憎むような奴ァ、みんなけだものでげさァね」

「そうとも」

柳原の土手を左に折れて、駕籠はやがて三河町の、大銀杏の下へと差しかかっていた。

夜は正に四つだった。

三

白壁町の春信の住居では、今しも春信が彫師の松五郎を相手に、今度鶴仙堂から板おろしをする「鷺娘」の下絵を前にして、頻りに色合せの相談中であったが、そこへひょっこり顔を出した弟子の藤吉は、団栗眼を一層まるくしながら、二三度続けさまに顎をしゃくった。

「お師匠さん、お客でござんす」

「どなたかおいでなすった」

「堺屋さんの、お上さんがお見えなんで」

「なに、堺屋のお上さんだと。そりゃァおかしい。何かの間違いじゃねえのかの」

「間違いどころじゃござんせん。真正証銘のお上さんでござんすよ」

「お上さんが、何んの用で、こんなにおそく来なすったんだ」

ついに一度も来たことのない、中村松江の女房が、訪ねて来たと聞いただけでは、春信は、直ぐさまその気になれなかったのであろう。絵の具から眼を離すと、藤吉の顔をあらためて見直した。