Classici giapponesi con furigana
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さようなら
さようなら
田中 英光
Leggi さようなら di 田中 英光 (たなかひでみつ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.251 caratteri · 44 schermate
どんな死者でも自分の愛する人たちにいつか逢えないかと、ひそかな願いをもち、墓の片隅に眠っている筈だ。マレエ語では別離の挨拶に、出てゆくひとが、「スラマトテンガル」(この地にとまることに幸福あれ)といい、送るひとは「スラマトジャラン」(旅ゆく人に幸福あれ)との言葉を送るとかきいた、日本でも万葉時代にはこうした素朴な別離の言葉があったのだろう。(幸ありませ)との一句を相聞、覊旅の歌の処々にみうけた気がするし、「われは妹想う、別れきぬれば」の感慨に、ぼくは単純卒直な惜別の哀愁を感ずる。
それに比べ、「さようなら」は冷たすぎる。別離の日本語としてこれを廃止し、新しい言葉を発明しよう。ぼくはそんな目的で、この小説を書きだしたのではない。「さようなら」という日本語の発生し育ち残ってきた処に、日本の民衆の暗い歴史と社会がある。まだ、当分「さようなら」の一語は日本人に使われ続けるだろう。それだけの内的必然がある。その遣切れぬ哀しさに、ぼくは自分の親しい人たちに「さようなら」してきた追憶を絡ませて、みたかったのだ。ぼく自身が矛盾、前後撞着、相反感情をバラバラに抱き得る、例の生者には不可解な分裂症患者に似た者のひとりの実感は自明の理、殊更、特筆大書する必要はなかったのである。