Classici giapponesi con furigana
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さようなら
さようなら
田中 英光
Leggi さようなら di 田中 英光 (たなかひでみつ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.251 caratteri · 44 schermate
彼らは精神病院の一室で誰の邪魔もせず、邪魔にもされず、呼吸して食事し眠って起き、その中ひとに知られずふいと死ぬ。ぼくはそんな彼らを堪らぬと嫌いながらも、既に死んでいる点で共感し憧がれてもいるのだ。彼らでさえ、現実にはっきり、「さようなら」をいうのを拒否しているのが小気味よくもあるのだ。自分では不合理、非論理と思うが、ぼくは自分を使者と信じながらも、実は未だ生の世界に「さようなら」をいいたくない。ぼくは今でもふいと耳に、ボレロの如き明るく野蛮な生命のリズムが鳴り響き、晴れて澄んだ初秋の午後、アカシアの花が白く咲き芳しく匂う河岸、青い川面に白いボオトを浮べ、自分の心や身体を吸いよせ、飽和した満足感で揺り動かし、忘我の陶酔に導いてくれる、そのひとを前にし、軽くオオルを動かしている幻想のよみがえる時がある。例の神を涜した為、未来永劫にわたり幽霊船の船長として憩いの許されぬ“さまよえる和蘭人”でさえ、女性の無償の愛が得られれば許されるという中世紀伝説があるのだ。だから中世紀敗戦日本の安っぽい、勝手に死者を気取ったぼくが未だに、こうした伝説に憑かれ、またの日、もう一度、そうした日があり得ることを秘かに信じ、その時に自分の復活があると、待望するのも可笑しくないだろう。