Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しじみがし

しじみ河岸

山本 周五郎

Leggi しじみ河岸 (しじみがし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.438 caratteri · 51 schermate

Aozora Bunko

――お絹の弟じゃないか。

律之助は初めてそう気がついた。

「おいたん、こえ、ね」少年は云った、「ね、おいたん、こえ」

「なんだ、なにか持ってるのか、なんだ坊や」

少年は固く握った拳をさしだし、そろそろと指をひろげた。そこには潰れてぐしゃぐしゃになった、小さな生菓子があった。

「いい物持ってるな」と彼は云った、「どれどれ、ほう、――鹿子餅か、洒落たものを喰べてるんだな」

「もやったんだよ」少年が云った、「またもやうんだよ、ね、みんなが取ようとしっかやね、おいたん怒ってくんか」

「よしよし怒ってやるよ、坊や」と彼は云った、「おまえ直っていう名前か」

「直だないよ」少年は首を振った、「あたい直だない、直は馬鹿だかやね、あたい馬鹿だないよ」

少年はずっとついてまわった。

律之助は少なからずもて余した。云うこともよくわからないし、向うで遊べといっても側からはなれない、彼の歩くあとから、どこまでもついて来た。――それから、差配の源兵衛に会って、当夜のことを訊いたあと、お絹と卯之吉の住居へ案内させた。七側並んでいる長屋で、卯之吉の住居は西から二タ側めにあり、お絹のほうは六側めにあった。