Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

Leggi ちいさこべ di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.480 caratteri · 67 schermate

Aozora Bunko

彼は乗り継ぎの早駕籠で来たのだそうで、「若棟梁にすぐ帰ってもらいたい」と、助二郎の伝言を告げた。

「仕事なかばに帰れるか」と茂次は云った、「いったいなんの用だ」

くろは言葉をにごした。

茂次は父の留造の名代で来ている。この土地の「波津音」という料理茶屋の普請で、大留がいっさいを請負った。左官、屋根屋、建具屋なども江戸から呼んだし、ほかに土地の職人や追廻しを十四五人使っている。茂次の伴れて来た三人のうち、大六は三十一歳になり、茂次の後見のような立場にいるが、これだけの仕事を大六に押しつけて帰るわけにはいかない。いったいなんの用だと訊き直そうとして、茂次はふと、昨日の火事のことを思いだした。

「おい」と茂次が云った、「うちが焼けでもしたのか」

くろはあいまいに頷いた。

「うちが焼けたのか」と茂次は声を高くした、「おやじやおふくろは無事か」

くろは黙って頭を垂れた。茂次は蒼くなって大六を見た。大六が立って来た。

「くろ」と大六が云った、「どうしたんだ、棟梁やおかみさんは無事なんだろう」

するとくろが泣きだした。

茂次がとびかかろうとし、大六が危なく抱きとめた。