Classici giapponesi con furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate
私はむしろあなたがこの数日間病気のために外出されなかった事を祝福しなければなりますまい。私は唯それだけを言うに止めて置きます。その理由を明言する事を躊躇していると言ったら、あなたは直に凡てをお察しなさるだろうと思います。それでは、今年の秋風が丈の高くなったコスモスの茎をゆり動す頃まで、私は田舎に行っていましょう。夜の涼しさに銀座の賑いが復活する時分、またお目にかかるのを楽しみにしていましょう。七月四日。」
君江は手紙の日附を見て、初めて七月になったのに心づいたような気がした。それと共に、わずか十日とはたたぬ先夜の事がもう一月も二月も前のような気がして、それ以来長らく枕についていたような心持もした。とにかく一年あまり毎日通馴れたカッフェーへ行かない事だけでも、境遇が一変してしまったような心持がするのに、時節も丁度その日入梅があけて、空はからりと晴れ昼の中は涼風が吹き通っていたが夕方からぱったり歇み、坐っていても油汗が出るような蒸暑い夜になった。小家の建込んだ路地裏は昨日までの梅雨中の静けさとは変って、人の話声やら内職のミシンの響などが俄に騒々しく聞え始め、路地の外の裏通にもラジオを始め、何という事なくいろいろな物音がしている。