Classici giapponesi con furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate
丁度三時五、六分前。十畳の一室は、朝十一時から店へ出ていた女給と、今方来たものとの交代時間で、坐る場所もないほど混雑している最中。鏡一台の前にはいずれも女が二、三人ずつ繍眼児押しに顔を突出して、白粉の上塗をしたり髪の形を直したり、あるいは立って着物を着かえたり、大胡坐で足袋をはき替えたりしているのもある。
君江は竪シボの一重羽織をぬいで肩掛と一つにして風呂敷に包んだ。そして廊下への出口に置いてある衣裳棚に、名前の貼紙がしてある処を見てその包を載せ、コンパクトで鼻の先を叩きながら、廊下づたいにパンツリイを通り抜けると、丁度店二階の方から歩いて来る春代という女に出逢った。帰り道が同じ四谷の方角なので、六十人いる朋輩の中では一番心安くなっている。
「春さん。昨夜はグレたんじゃないの。後で何かおごってよ。」
「それァあなたでしょう。わたし随分待っていたのよ。今夜はきっと一緒に帰りましょう。その方が経済だからねえ。」
君江はそのまま表二階の方へ行きかけると、階段の下から下足番をしている男ボーイが、「君江さん、電話です。」と頻に呼んでいる声が聞えた。
「はアイ。」