Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate

Aozora Bunko

といって、重に銀座辺の飲食店やカッフェーの女の噂をかく余り性の好くない小新聞に、君江が今日まで誰も知ろうはずがないと思っていた事が出ていたので、どうやら急に気味がわるくなって、人に勧められるがまま、まず卜占をみてもらおうと思ったのである。

『街巷新聞』に出ていた記事は誹謗でも中傷でもない。むしろ君江の容姿をほめたたえた当り触りのない記事であるが、その中に君江さんの内腿には子供の時から黒子が一つあった。これは成長してから浮気家業をするしるしだそうだが、果してその通り、女給さんになってから黒子はいつの間にか増えて三つになったので、君江さんは後援者が三人できるのだろうと、内心喜んだり気を揉んだりしているという事が書いてあった。君江はこれを読んだ時、何だか薄気味のわるい、誠にいやな心持がした。左の内腿に初めは一つであった黒子がいつとなく並んで三つになったのは決して虚誕でない。全くの事実である。自分でそれと心づいたのは去年の春上野池の端のカッフェーに始めて女給になってから、暫くして後銀座へ移ったころである。それを知っているのはまだ女給にならない前から今もって関係の絶えない松崎という好色の老人と、上野のカッフェー以来とやかく人の噂に上る清岡進という文学者と、まずこの二人しかないはずである。