Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate

Aozora Bunko

そよそよと流れて来る夜深の風には青くさい椎の花と野草の匂が含まれ、松の聳えた堀向の空から突然五位鷺のような鳥の声が聞えた。

「アラ。何だか田舎へ行ったようねえ。」と君江は空を見上げた。矢田はすかさず、

「どこか静な処へ行こうじゃないか。一晩位犠牲におしよ。僕のために。」

「矢さん。もしか目付かって、ごたごたしたら、あなた。あの人の代りになってくれること。わたし、実はもうカッフェーなんかよしたいと思っているの。」と君江は矢田の心を引いて見るつもりで、わざと身を摺り寄せながら静に歩き出した。実は今夜連れられて行った先で、矢田が気前好く祝儀を奮発するかどうかを確めて置こうと思っただけである。

「あの人ッて、誰だ。この間一緒に邦楽座へ行った人か。」

「いいえ。」と言いかけて君江は心づき、「え、そうよ。あの人よ。」と狼狽えて言直した。邦楽座へ一緒に行ったのは旦那でも恋人でも何でもない。つまり矢田さんと同様なその場かぎりのお客なのである。

「そうか。あの人が君さんの旦那なのか。」と矢田はすっかり本気にして、「しかし、今まで世話をしている関係があっちゃア、そう急によしてしまう訳には行かないだろう。