Classici giapponesi con furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate
もっと激烈な痛苦を肉体と精神とに加えてやる機会を窺うため、清岡は十分相手に油断をさせ、こちらの胸中を悟られぬよう、以前にも増してあくまで惚れ込んでいるような様子を示すようにしていたが、平常心の底に蟠っている怨恨は折々われ知らず言葉の端にも現われそうになるのを、清岡は非常な努力でこれを押えていなければならない。
今方占者のはなしから、清岡は我知らず言過ぎたと心付き狼狽えて言いまぎらしたのも、実はこういう事情からである。このまま長く向い合って二階にいるのはよくないと心づいて、腕時計を見ながら、いかにも驚いたように、「もう十時半だ。そこまで一緒に出かけよう。」
君江の方でも昨夜泊ったまままだ湯にさえ入らぬ身のまわりを男に見廻されるのが、何となく辛くてならないので、何はともあれ一まず外へ出るに如くはないと考え、
「ええ。少し歩きましょう。お天気が好いと店へ行くのがいやになるわ。一日、日の目を見ずにいるんだから。」とぬぎ捨ててあった竪しぼの一重羽織を引掛けて、窓の障子をしめた。
「今日十一時だと明日は五時出だね。」
「ええ。だから、今夜店へいらしってよ。何処かゆっくり遊びに行きたいわ。