Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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われらのいえ

われらの家

宮本 百合子

Leggi われらの家 (われらのいえ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2887 caratteri · 6 schermate

Aozora Bunko

けれども、今自分の胸に流れて居るような一抹の寂しさは、一度でも嘗て味ったことがあるだろうか。

泰子の良人は、四五日前から短い旅行に出て居た。独りっきりで淋しい彼女は、留守番を実家の書生に頼んで、此方へ寝泊りして居るのである。

処々に教鞭を取って、平日に纏った休日を持たない茂樹は、試験が済んで、新学期迄数日の暇が出来ると、早速、郷里に父親を訪問する事を思い立った。

老人は、もう七十歳に近い。近頃、健康が勝れないと云う稍々悲観した手紙を受取って居たので、三月には、二人でお訪ねしましょうと云う事が正月頃から懸案に成って居たのである。

「去年も今頃だったろう、あれは幾日位だったろうかな

少し暇のある夕飯後など、彼等は、小さい一閑張りの机の上に地図を拡げ乍ら話し合った。

「去年? 四月ですわ、十五六日頃じゃあなかったこと、ほら菜の花が真盛りだったじゃあありませんか

「……それじゃあ三月末じゃあまだ寒いだろうな、何にしろ随分時候は遅れて居るんだから

茂樹の故郷は、敦賀の近処であった。

「だって拘やしないわ。いいわね、久し振りで田舎へ行くのは。えーと、何処でしたっけか、先、忠一さんが被行ったって云う温泉、彼処へ行って見ましょうよ、ね、若しよかったらお父様もお連れして